44CmFRPドブソニアン

1995年に完成したFRP製ドブソニアンです。これはスカイウオッチャー誌に掲載されたので、ご存じの方も多いと思います。87年にアメリカのクールター社に鏡を発注して手元に届いたのが89年、完成までにそれから実に6年も掛かってしまいました(^^;。

一番の問題だったのがチューブ鏡筒と収納性の両立で、さらには、高価な光学系を長持ちさせるために保管時のことも考慮する必要がありました。

最終的には鏡筒を4分割にし、それぞれを重ね合わせることで2つのユニットにし、片方のユニットに光学系を集めることで、保管時の管理もし易くすることが出来ました。

架台ユニットは車に積みっぱなしで、光学系ユニットだけ乾燥剤を入れて室内に保管しています。

なお、お察しの通り、この望遠鏡で得たノウハウはNinja−400に生かされています。

収納状態
左が架台系、右が光学系ユニット カリブに搭載したところ
現在は接眼部やファインダーも簡単にはずせるようにしたので、ぶつける心配が無くなりました。架台部が30Kgくらいあってちょっと重かったので、昨年(2000年)の夏に少し軽量化してみました。何キロになったのかは測ってません(^^;。

◆組立て
説明上、鏡筒は上からNo1、No2・・・としています。だいたい2分くらいで完成します。
1)No2鏡筒を取り出す 2)No3鏡筒を抜いて・・・ 3)上下反対にして重ね
4)No2鏡筒を載せて 5)主鏡セル部をはずし 6)鏡筒に取り付ける
7)No1鏡筒を載せる 8)ウェイトを取り付け 9)出来上がり。

モータードライブ
上下左右の微動をモータードライブで行えるようになっています。中倍率で視野に入れた対象を追うのには大変重宝してます。

コントローラー
・上下微動
昔の赤道儀に入ってたウォームギヤを使って、ステッピングモーターで駆動しています。このギヤードモーターは秋葉原のジャンク屋さんで見つけたもので、水平回転にも使ってますが、なかなか重宝してます。ギヤ比は1/75と1/300のがあって、上下に1/75、水平に1/300を使いました。ウォームギヤは1/135だかの中途半端なギヤ比です(^^;。
駆動回路は基本的に秋月電商のキットで、正転逆転、スピード調整が可能なように改造してあります。

鏡筒耳軸のシャフトとウォームギヤの間にはテフロン板を挟み込んだクラッチがもうけてあり、リングを締め付けることで滑り具合を調節できるので、そのまま手で鏡筒を動かして粗動する事もできます。詳細画像はこちら
上下微動部分。下の方のごちゃごちゃしたのが駆動回路です。
・水平微動
水平回転にはアルミ製の、たぶん中華料理の回転テーブルに使うと思われる、直径45Cmほどあるベアリングを使用しています。これは池袋の東急ハンズで見つけました。微動はフォーク側のモーターに付けたゴムローラーでベアリングの外周を駆動しています。このローラーはベアリングの外周にスプリングで押しつけられていて、ある程度の力が掛かるとすべるようになっています。そのため水平回転もそのまま手で動かして粗動する事が出来ます。詳細画像はこちら
水平回転のベアリング

◆ダンパー
構造的に鏡筒の上下動に大きなフリクションが与えられません。またギヤーのバックラッシュの影響で、ガタも出てしまいます。これらを軽減するために、油圧ダンパーを2本使用しました。今回使用した物はダンパーの強さを押し引き両方とも調整できるタイプで、ちょっと高かったですが、なかなか使いやすいものでした。

ただ、どうしても上下動にちょっとしたグラグラ感があり、微調整はモータドライブ必須になってしまっています。なので、風に吹かれると弱いです(;;)。

詳細画像はこちら

斜鏡セル
S字型のスパイダーを試してみました。輝星に向けたときに、スパイダーによる光芒は見えません。ただ、どうも星像のシャープさに欠ける気がすることや、本来の使用目的からは外れますが、惑星表面のコントラストが悪いような気がするので、最近4本スパイダーに作り替えました(写真下)。

まだちゃんと検証してませんが、やはり星像はシャープです。
4本スパイダー製作の詳細はこちら

◆主鏡セル
9ポイント支持で、鏡周をバンドで吊るタイプのセルです。詳細はこちら。裏側中央にはペンチレーションの為のルーバーが付いていて、ここにファンを取り付けて外気を送り込み、強制冷却します。ルーバー内には埃が入らないようにフィルターを付けてあります。

セル部には蓋が付いていて、すべて組み上げた後に耳軸部の鏡筒に付いた窓から手を突っ込んで開けるようになってます。蓋は薄いFRPで出来ていて、鏡筒内面のRに沿うように開きます。

◆接眼部
ジャンクで買ったロシア製マクストフ用のクレイフォードタイプの接眼筒を利用し、アイピースアダプタと台座を製作しました。3本のネジを緩めることで簡単に取り外せますので、移動の時は外して持ち運びます。

クレイフォードの接眼部は大変スムースに動きますので、特にドブソニアンのような架台の場合、ピント合わせ時の揺れが少なくて助かります。


ファインダー
ビクセンのST4の光源部を利用して作った透過型のファインダーです。光源部から45度に傾けられたガラスにレチクルを投影し、それを星と一緒に見ますのであたかも星空にレチクルが浮かんでいるように見えます。原理的にはテルラドなどと同じものです。

ただ、等倍の透過式そのままだと微光星が消えてしまい、おもしろくありません。そこでジャンクで入手したワイドビノのかたわれを取り付けてみました。すると見える星の数がぐんと増え、導入が大変楽になりました。倍率も低く正立ですので、どこを見てるかわからなくなることもありません。

ST4のレチクルは中心付近がうるさいので細いフェルトペンで第2円くらいまで塗りつぶしてあります。また、そのままだとレチクルが小さいので、ジャンク箱にあった適当なレンズに交換して、大きく投影されるようになっています。45度の円形ガラスと保護用の前面ガラスはカメラ用の透明フィルタです。

ちなみに、後に笠井トレーディングから「ワイドファインダー」として発売された物の原型です。