ニュートン式の鏡筒について
ニュートン式は色々な要因によって、どうしてもコントラストが悪くなりがちです。天体望遠鏡は僅かな光を集める物ですから、余計な光で背景が明るくなり、その僅かな光が消えてしまっては何もなりません。

日本では意外とおろそかになっているニュートン式の迷光対策のことや、筒内気流のことなど、鏡筒を作るときに考えておいた方がよいと思われることを集めてみました。


◆迷光対策

昼間アイピースを接眼筒に付けて筒先を明るい方に向け、離れた所からアイピースを見ると白い円が見えます。これをラムスデンの円(射出瞳)といいますが、その周りに見える黒いはずの部分が何となく白っぽくなっていることがあります。この部分をいかに黒く見えるようにするかがポイントです。その方法としては、

1)遮光絞りを付ける
遮光絞りとは、いわば衝立のようなもので、壁を作ってその後ろに影を作るわけです。光ってしまうところに光を当てなければ光らない、と考えるとわかりやすいと思います。

2)植毛紙を貼る
遮光絞りでは対応できない部分には植毛紙を貼るのが良いです。ただし、一般的に売っている植毛紙の中には、糊面にカビが生えてしまったりする物があるので注意が必要です。

3)艶消し黒を塗る

等が考えられます。2)、3)はわりと一般的なので、ここでは意外と知られていない1)の遮光絞りについてちょっと考えてみたいと思います。




わかりにくい図ですいません(^^;。視野径dとありますが、実際の視野径のことではなく、使用アイピースの最大スリーブ径と考えてください。鏡筒先端部にあるdは斜鏡がないものとして考えたときの仮想の視野径(最大スリーブ径)です。大きな紙に光路図を書くとわかりやすいと思います。

(1)は筒先絞りです。最低でもこれだけは付けましょう。筒先絞りの内径は、主鏡の焦点位置と同じくらいの所に置く場合、主鏡口径に望遠鏡自作データの斜鏡短径の求め方の項にある必要視野径dを足した径より少し大きいくらいにします。

の部分はなるべく長い方がよく、短い場合はフードなどを付けるとよいです。この部分に絞りを付ける場合は、光路図に沿った内径のものを作ります。効果の大きい部分ですので、数枚付けると良いでしょう。

の部分に安易に絞りを付けると逆効果になることがあり、注意が必要です。部分の絞りより大きな内径で、エッジをカミソリのように尖らせた物が必要になります。かわりに植毛紙やフェルトを貼るのも良いでしょう。Ninja−320の耳軸部分の膨らみを筒先内側から覗くと真っ暗なので、の部分をへこまして穴にしてしまうのも良い方法だと思います。

の部分は部のように光路図に沿った内径の物をつけますが、あまり効果のない部分なので、それほどたくさん付ける必要はないでしょう。

(2)は視野径の端から見た赤線と光路(青線)が交差するあたりに取り付けます。

の部分に下手に絞りを付けると、光の当たった絞りが接眼部から見えてしまうために、逆効果になるおそれがあります。なので、ここは絞りより植毛紙等の方がよいと思います。

ドローチューブの先端にも絞りを付けると効果があります。また、斜鏡や斜鏡金具もしっかり艶消し黒を塗るなり植毛紙を貼るなりしておきます。

図からもわかるように、鏡筒はなるべく太めに作り、接眼部から先を長めにするのが良いと思います。また、主鏡セルの構造によっては主鏡のまわりから迷光が入り込むことがあります。この場合は、鏡筒後端に温度順応の妨げにならないような遮光カバーを付けてやると良いです。


◆筒内気流

筒内気流が起きる原因と対策
主な原因は暖かい主鏡です。主鏡セルを開放型のシースルーセルにして、主鏡が早く外気温度になじむようにします。電動ファンを付けて強制的にベンチレーションするのも良いでしょう。
この場合、主鏡の後ろから外気を吹き付けると順応が早いですが、星像はメチャメチャです(^^;。やむを得ず観測する時は吸い出す方向にすると良いです。

鏡筒に断熱な材料を使った場合も筒内気流がなかなか収まらないようです。肉厚の紙筒や木材の鏡筒では注意が必要です。FRP鏡筒でも、あまり肉厚にしてしまうと問題があります。厚さ4mm以下に押さえたいところです。

主鏡から立ち上った気流は、鏡筒内壁を伝わって上ってきます。このためバッフルの所で熱気を外に逃がす工夫や、バッフルに穴を交互にあけ、光路内に気流が入り込まないようにする工夫をした鏡筒もあります。

まぁ、観測前に望遠鏡を暖めないことが何より大事だと思いますが(^^;。

開放鏡筒は筒内気流が発生しないか?
筒がないから筒内気流は発生しません゜゜(o )☆\(ーー;)バキ
では、温度順応無しでいつでもすぐ観測できるかというと、答えは×です。主鏡が暖まっている場合に主鏡表面から気流が立ち昇って来て観測の妨げになるのは同じだからです。

温度順応は多少早いかも知れませんが、主鏡が汚れやすいこと、迷光が入り込みやすい事などを考えると、開放鏡筒はあまりお勧めできません。あえて製作する場合でも、写真用の暗室カーテンなどを利用して、開放部分の遮光カバーを作った方が良いと思います。

筒外気流(^^;     

特に冬場などは観測者自身から立ちのぼる気流や呼気が星像を乱すことがあります。開放鏡筒や、アルミなどの熱伝導の良い材質の鏡筒、筒先の短い鏡筒などでは注意が必要です。