◆ニュートン反射のスパイダーの影響について |
普通のタイプのニュートン反射では、どうしても鏡筒内に斜鏡を吊るために、取り付け足(スパイダー)が必要になります。一般的には3本か4本ですが、1本とか2本、あるいはカーブしているものなど、色々なタイプの物があります。 どれを選んだらよいのか私も悩むところがありましたが、今回、無遮蔽ニュートンを借りることが出来ましたので、2本、3本、4本及びカーブタイプについて見え方の実験をしました。相変わらず絵が下手なんで、「こんな感じに見えるんだな」くらいに思ってください(^^;。 |
実験に使用した無遮蔽ニュートンOA−4。 アメリカのDGM-Optics社というところの製品で、10CmF10のオフアキシスニュートンです。中央遮蔽がないおかげで惑星などは10Cmとは思えない、すばらしい見え方をします。どちらかというとシーフに似た感じでしょうか。 なぜか木製のドブソニアン架台ですが(^^; |
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斜鏡が接眼部にくっついています。形式的にはハーシェルニュートン式ですが、主鏡は大きなパラボラ鏡の一部を切り取ったような面をしています。25Cmニュートンに10Cmの偏芯絞りを付けた、というとわかりやすいと思います。ちょっと違うのは光軸を偏芯部中心(10Cm鏡部分)にちゃんと合わせてあるということです。 なお、このため主鏡には方向性があって、回転させることは出来ません。 ちょっと残念なのは迷光処理がイマイチなところで、もう少しチューンアップしたいところです。 |
左は実験に使用したテストピース。下の丸いのは中央遮蔽再現用の丸板で、テストピースの中央に立っているピンに刺して使います。 右は望遠鏡にセットした所。段ボールで作った枠内にポンと置くだけです。 |
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実験は主にUW4.7を使用して、200倍くらいで行いました。主な対象は、輝星がデネブとアルタイル、惑星は木星と土星です。テストピースは影響が大きく出るように太さ4mmとし、中央遮蔽30%(30mm)で実験した結果を中心に解説しています。なお、3本と4本のみ、厚さ0.4mmの物でも実験をおこないました。 なお、それぞれの違いはごく僅かで、パッと取り替えて見比べないとわからないレベルであることをあらかじめ記しておきます。 |
◆恒星の場合の見え方 |
テストピース | 焦点内像 | 焦点直前像 | 焦点像 | 簡単な印象など |
2本スパイダー 4本の光芒が出る。 焦点像はややシャープ感に欠ける。 |
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3本スパイダー 6本の光芒が出る。 焦点像の第1回折リングがやや明るく太い。 |
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4本スパイダー 8本の光芒が出る。 焦点像は一番シャープに感じる。 |
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カーブスパイダー(90度) 光芒はほとんど出ないが、光が拡散している感じ。 |
※4本スパイダーは、スパイダーから発生した波が、外へ拡がろうとする外輪の光を打ち消している(抑えている)ように見えるのに対して、3本スパイダーやカーブスパイダーではそれがなく、ユラユラと太く内外に拡がってしまっています。 ※ここで言う中間輪とは、絵の位置より僅かに内側にピントをずらして、2本ほど中間輪が見えている状態にしたときの中間輪の事で、安定してはっきり見えていたのは4本スパイダーだけでした。
※3本スパイダーとカーブスパイダーは、星像の周りのハロがやや強く、コントラストが悪い感じがします。光芒は4本スパイダーが明るくて細く、3本スパイダーはやや暗くて太い感じ。 ※3本スパイダーは、どうも星像がユラユラと落ち着かず、4本スパイダーの方が安定していました。 ※0.4mm厚のスパイダーでは影響が大幅に小さくなりますが、傾向としては同じようです。 ※従来4本スパイダーは4本の光芒が出るといわれていましたが、よーく観察すると8本伸びているのがわかります。これは中央遮蔽でスパイダーが分裂されているためで、中央遮蔽がないと4本の強烈な光芒が出ます。中央遮蔽のない4本スパイダーというのも不自然ですので、4本スパイダーは8本の光芒が出るというのが正しいと思います。
※明るい部分の淡い模様とは木星の北半球の縞(NTB,NNTB,NNNTB)のことで、たまたまNNNTBまで見えているとき、4本スパイダーと2本スパイダーではすべて確認できるのに、3本スパイダーとカーブスパイダーではNNNTBを確認できませんでした。 ※0.4mm厚のスパイダーではほとんど違いがわかりませんでした。 ●とりあえずのまとめ 結論から言うと、肉厚を薄くして、幅で強度を稼ぐベーンタイプの4本スパイダーがやはり一番無難で良いと思います。ただし、あまり薄すぎたり、鏡筒への取り付け部分で引っ張りの力(テンション)が掛かっていないと、簡単に斜鏡の振動が起きてしまいますので、ご注意ください。現実的には0.5mm厚くらいが工作もし易くて良いと思います。 最初はスパイダーによる光芒の悪影響を調べるために始めた実験でしたが、実験を進めていく内に問題なのは光芒の本数ではなく、光芒同士が干渉する角度が重要であるような気がしてきました。こういった回折現象に詳しい方がいらっしゃいましたら、ぜひ補完していただきたいと思っています。 余談ですが、今回の実験で思い知らされたのは中央遮蔽の弊害です。小口径では標準的な30%くらいでも、惑星などは表面のコントラストがかなり落ち、すっきり見えなくなってしまいます。惑星を綺麗に見たい場合、まずは中央遮蔽(斜鏡径)を、問題が起きない程度になるべく小さくする事を考えるべきだと思います。 なお、これがすべてと言っているわけではなく、異なる条件では違った結果が出るかもしれません。あくまで単一機種での実験ですので、よろしくご理解ください。 |
輝星の周りに光芒が出る理由 スパイダーによって妨害された星の光は両側に波となって拡がって行きます。これが光芒となって見えるわけです。ちなみにスパイダーの厚さが薄いほど波が小さくなって光芒の光は弱まります。 |
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